
吉田 愛
浮遊
2026年4月10日 - 27日
本展「浮遊」において、吉田愛は、これまで自然環境の中で生成されてきた作品を、都市の内部へと導入する。
風に揺られ、光を受け、時間とともに変化してきたそれらの作品は、本来、制御不能な外部の要素と共に成立してきた。
しかし本展の舞台となるのは、外界から切り離されたコンクリートの空間である。
この断絶は、単なる環境の変化ではない。
それは、作品の前提そのものを問い直す試みである。
吉田の代表作『真鍮の海』は、極めて薄い膜として空間に広がりながら、光や空気の流れを可視化する装置として機能してきた。
それは自然の中では「出来事」として立ち現れ、鑑賞者の身体感覚を巻き込むかたちで経験される。
では、その揺らぎが抑制された空間において、作品は何を獲得するのか。
ここで浮かび上がるのは、「風そのもの」ではなく、風の不在によって逆説的に立ち上がる気配である。
わずかな空気の動き、鑑賞者の身体の移動、視線の揺らぎ──
それらは作品に対して微細な変化をもたらし、空間の内部に新たな時間を生み出す。
吉田の実践は、日本画の文脈を基盤としながらも、支持体や技法を拡張し、「見る」という行為を再構築するものである。
それは単にイメージを提示するのではなく、環境そのものを作品化し、知覚のあり方を更新する試みといえるだろう。
本展において鑑賞者は、自然の再現を見るのではない。
むしろ、自然の不在の中でなお立ち現れる揺らぎを、自らの身体を通して経験することになる。
制御された空間の中で、なお漂い続けるもの。
その不確かな存在に、ぜひ身を委ねていただきたい。
「真鍮箔を2800枚貼り込んだ薄い膜状の作品「真鍮の海」は、京都の山の中・神奈川の海や大きな桜の倒木の下・東京浅草のアパート屋上など様々な場所を旅し、その場所の光や風に揺られ漂ってきた作品です。
風に吹かれ、空気を含み動き出すと巨大な生物の背中や水面のようにも感じます。
制作したきっかけは、木漏れ日差し込む森の中に対照的な金色の海を作りたいという子供のような夢からでした。
実際、野外に設置すると刻々と変わる陽射し、金色の面の上に落ちる木の影・緑の葉・真っ赤な椿は、時間と共に表情を変え、あたかも琳派の作品が現実の物体になったかのようでした。
そして、今回展示する蝶の羽で制作した凧。
使用している4~50年前に採取された羽の欠片は、2026年の今も全く色褪せず美しい姿です。
ぞくっとさせられるほどの細かな模様や色彩の力、そんな羽達をもう一度空に飛ばすため凧の形に作り直しました。
自然の中で実感した「生と死の喜びと興奮と恐怖」がエネルギーになり、制作の原動力となっています。
「風のように不規則な驚きと水のような不確定な姿を表現したい。」と日本画をベースに様々な表現技法で制作をしています。
コンクリート壁に囲まれたi GALLERY OSAKAで、自然の中を浮遊していた作品達からどんな揺らぎを感じるのか、体感していただきたい。」
- 吉田 愛








