
指江 昌克
"Aufheben"
i GALLERY OSAKA は、このたび指江昌克氏の個展『Aufheben(アウフヘーベン)』を開催いたします。
指江昌克氏は、本展『Aufheben』において都市の表層に刻まれた看板やシャッター、過去の街並みの断片──いずれも本来の機能を終えた視覚言語を──一度解体し、“オーブ”と呼ばれる球体へと再構築します。写実的な筆致で描き出されるこれらの〈浮遊する都市〉は、時間のずれや不協和音をあえて残しながら、私たちの記憶に潜む風景の揺らぎを鮮烈に可視化します。
なおタイトル “Aufheben” はドイツ語で「止揚」を意味し、相反する要素を併せ持ちながらより高次のかたちへと昇華させる概念を示しています。
本展キービジュアルにあしらわれた「宝」の一文字は、そのヴィンテージ調ネオンサイン体によって、7月5日に70年の歴史を閉じる味園ユニバースの看板文字「味」「園」とひそやかに呼応しています。指江氏自身がその意図を公言していないものの、この視覚的参照は、都市の片隅に埋もれた〈真の財産〉──忘却された記憶や街の残滓──を掘り起こし、“浮遊する都市”として再構築する本展のテーマと見事に重なります。展覧会初日に掲げられるこのビジュアルは、大阪の歴史と現在を結び、新たな知的対話の扉を静かに開くことでしょう。
ご来場の皆さまには、キャンバスに浮かぶオーブ一つひとつの緻密なディテールに目を凝らし、錆びついたサインや朽ちた構造体がまるで記憶の欠片のように立ち上がる瞬間をじっくりとご体感いただきたいと思います。これらの〈浮遊する都市〉は、ものづくりの息吹と庶民の営みが交錯する〈生の都市〉大阪の時間を内包し、戦後の高度成長期から現代に至る記憶の層を呼び覚ますことで、鑑賞者それぞれの想起と対話を誘い起こします。会場では、その複層的な時間と記憶の震えを肌で受け止め、指江氏が示す新たな都市体験を存分にお楽しみください。
DATES
2025年7月4日(金) - 8月4日(月)
OPENING RECEPTION
7月4日(金) 17:00 - 20:00
LOCATION
i GALLERY OSAKA
〒542-0081
大阪府大阪市中央区南船場3丁目8-14
ACN心斎橋Garden1F
ARTIST
指江 昌克
「都市の風景に遍在する、日常に埋め込まれた記号の断片。
それらは本来、機能的な目的を持った視覚言語だが、時の経過とともに意味を脱臼し、やがて記憶の中で「風景」として定着していく。
本展では、そうした視覚記号を断片化し、写実の手法によって構成要素のリアリティを保持したまま再編成することで、風景と記憶のあいだにある構造の揺らぎを可視化することを試みている。
収集されるイメージの多くは、インターネット上に散在する過去の街並みや記憶の痕跡であり、それらを絵画空間の中で再構成することで、記号の物理的な集積体としてのかたちが立ち上がり、記憶と現在が交差する地点をつくり出している。
タイトルに掲げた「Aufheben (アウフヘーベン)」は、そうした運動を含んだ構造への関心と重なっている。
記号と風景、記憶と制度、個と社会のあいだに生じる摩擦や接続のかたちを、ここに仮設的に提示する。」
- 指江 昌克
指江 昌克 / MASAKATSU SASHIE
経歴
主な個展
2025 「SYMBOL」 Outré Gallery / Melbourne
2023 「蛍光灯のまたたき」 ギャラリー O2 / 金沢
2021 「COMPLEX」 Merry Karnowsky Gallery / Los Angeles
「LOOP」 Dorothy Circus Gallery / Rome
2020 「THE PATCH」 Merry Karnowsky Gallery / Los Angeles
2019 「Biotop」 SECRET FRESH / Manila
2018 「NEWS」 金沢アートグミ / 石川
「Kaleidoscope」 MERRY KARNOWSKY GALLERY / Los Angeles
2016 「External effect」 Jonathan LeVine Gallery / New York
「Micro Invasion」 Anima Gallery/ Doha
2015 「Blind Box」 MERRY KARNOWSKY GALLERY / Los Angeles
2013 「Coacervate」 Jonathan LeVine Gallery / New York
2012 「見えざる手」 ミヅマアートギャラリー / 東京
2009 「デファクトスタンダード」 ミヅマアートギャラリー / 東京
「Twentieth Century Boy」 / Los Angeles
2008 「Under Fluorescent Light」 GR2 / Los Angeles
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